松波弘之(京都大学名誉教授)が語る 芝原健太郎の歩み ー世界初の反転型SiC-MOSFETを実現ー

芝原健太郎君の歩んだ道

松波弘之(京都大学名誉教授)

(「1.出会い」を省略)



2.卒業研究、修士論文、博士論文



半導体SiC(シリコンカーバイド)の研究は、ようやくSi (シリコン)基板上の3C-SiC(ß -SiC) のヘテロエピタキシャル成長が再現性よく成長できるようになっていた頃である。

芝原君の卒業研究論文は、「β-SiCの熱酸化膜形成とMOS構造の電気的性質」で、デバイス化に向けて一歩を踏み出し始めていた。多分、この頃から博士課程の進学を想定していたように思うが、修士課程では、結晶成長から始めたいということで、仕上がった論文は、「炭化バッファ層を用いたCVD法によるSi基板上へのβ-SiC単結晶成長と不純物添加」となった。この段階で、 CVD (Chemical vapor Deposition)法による3C-SiC成長層の伝導度制御が可能になった。

必要とする半導体単結晶を制御性よく作るところまで来たから、これから先はデバイスということで、SiCを用いたMOSFET (金属(M)-酸化膜(O) -半導体(S)電界効果トランジスタ(FET) の作製に挑戦して貰った。

幸いにも、ある会社から中古のイオン注入装置を寄付して貰うことができたので、イオン注入から挑戦と言うことになった。研究室では、全く経験のない装置で、多くの苦労があった。教室内でもイオン注入技術に長けた人材は居なかった。他大学でイオン注入を手掛けていた研究者に相談をして、SiCの場合にどのようになるかを自ら解析して、注入条件を設定した。

何物にもめげず、前進あるものとの意気込みで研究に取り組み、1986 年にはMOSFETが実現した。世界初のMOSFETであり、国内のSSDM (固体素子材料会議) でLate Newsとして発表してもらうとともに、IEEE Electron Device Lett.誌に発表した。 

博士論文は、これらをまとめて、「Epitaxial Growth Of SiC by Chemical vapor Deposition and Application to Electronic Devices」で1988年3月に工学博士を授与された。学位論文には、後述する「ステップ制御エピタキシー」の基本が含まれている。



3.初めての国際会議

1986年にSi上の3C-SiCを用いて、世界初のMOSFETを作製した成果をもって、1987 年4月に米国アナハイムで開かれたMRS (Materials Research Symposium)で発表するために芝原君にとっては初めての国際会議に同行した。

UC (University of California) Santa Barbara 校を訪問した後、ヨセミテ公園を経由、サンフランシスコに着き、Stanford大学のDutton教授を訪問した。大学院生を引率しての初めての海外出張であり、緊張もしたが、芝原君がどのように感じたかは、詳しくは聞かなかった。

また、この年の暮れ、Washington DCで、第1回のSiC国際会議が開かれた。このとき、行動は別であったが、誕生してすぐのCree Researchを訪問したようである(先だって、12年ぶりでCree Inc.を訪問したときに、創始者の一人Dr. Palmour から、このことを聞かれ、「残念ながら亡くなった」と伝えたところ、哀悼の意を表していた。

世界初のSiCのMOSFETを提示した成果の大きさは、研究者であれば忘れられないものであることを改めて認識した。



(「4.NECへの就職」を省略)



5.広島大学への就任と活躍

出版関係など一部省略)

2005年4月にとても嬉しい連絡を受けた。京都大学が1987年にSSDM (固体素子材料国際会議)で発表した「Step-Controlled VPE Growth Of SiC Single Crystals at Low Temperatures」by N. Kuroda, K. Shibahara’ w. Y00′ s. Nishino’ and H. MatsunamiがSSDM-2005で、表彰されるというニュースであった。

第1回から2000年までの間にSSDMで発表された論文の中から、年に1件だけ表彰されるたいん名誉な賞である。

授与式では、著者の 5人(黒田、芝原、兪、西野、松波) が集まることができ、たいん嬉しく、晴れがましい経験をした。

この技術が中核となって、今、パワー半導体SiCの実用化が始まっている。 (以下略)

2011年10月10日

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