芝原健太郎 | 半導体研究者アーカイブ
Kentaro Shibahara
 
芝原健太郎(1960–2011)は、SiC半導体研究の黎明期に、ステップ制御エピタキシーの実現に大きく寄与するとともに、世界初の反転型SiC-MOSFETの動作実証を主導しました。その後、NECでの研究開発を経て、広島大学1ではシリコンCMOSの微細化を中心に、半導体デバイス・プロセス技術の研究を展開しました。本サイトは、その研究業績と学術活動を資料とともに記録・保存するアーカイブです。

芝原健太郎
Kentaro Shibahara(1960 – 2011)

プロフィール学術活動研究業績タウア・ニン監訳監訳エピソード受賞
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主な研究業績(京都大学時代:1984年ー1988)

SiCのステップ制御エピタキシー2(Step-Controlled Epitaxy)実現(1987年)

1987年、京都大学松波弘之研究室で黒田尚孝氏らと実現3
高品質のSiC結晶被膜を成長させる技術で、今日のSiCパワーデバイス実用化につながる基盤技術となった。
[→ SiC研究業績紹介]

この研究業績によりSSDM Award4受賞(2005年)

論文:[Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures(全文)]
証言:[証言記録:ステップ制御エピタキシー ― 黒田尚孝と芝原健太郎 ]
研究史:[ステップ制御エピタキシー実現までのSiC研究]

左:SiCオフ基板上におけるステップ制御エピタキシーの模式図/右:CVD法の図解 SiC基板上にSiC薄膜を成長させるときのCVD法の説明図5

世界初の反転型SiC-MOSFETを作製・動作実証 (1986年)

SiC半導体研究の黎明期における成果で、現在のSiCパワーデバイス研究につながる先駆的なデバイス実証となった。 
[→ SiC研究業績紹介]

論文・解説:[世界初の反転型SiC-MOSFET動作実証 ― IEEE EDL 1986
証言:[松波弘之が語る「世界初の反転型SiC-MOSFET実現と芝原健太郎

反転型SiC-MOSFETの断面模式図6 

オフ角基板によるAPD抑制(1986年)7

オフ角基板上で平坦なSiC層が得られることを初めて見いだし、その要因がAPDの抑制にあることを結晶学的に解明した。
この研究成果が、ステップ制御エピタキシーの実現につながった8

主な研究業績(広島大学時代:1995ー2011)

1990年代後半から2000年代、半導体の微細化が進むなかで、MOSFETのさらなる小型化・高性能化を支える接合形成、ゲート材料、プロセス技術を研究した

ゲート長100 nm以下,ゲート酸化膜1.2 nmの極微細MOSFETを実現(1998年)

アンチモン(Sb)斜めイオン注入を提案し,電流駆動力の向上を実証(2002 年)

メタルゲートの仕事関数変調を可能にする複数の手法を実証(2003年~2006年)

Ge極浅接合形成時の表面荒れ抑制技術を提案(2006年~)

━SiCステップ制御エピタキシーについての図、資料、説明━

CVD装置の説明図(1987年実現のステップ制御エピタキシーの場合)
ステップ制御エピタキシーでは、SiCオフ基板の上にSiC薄膜結晶を成長させた.  CVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)の反応管の中で、シラン(SiH4)とプロパン(C3H8)を反応させ、SiC基板の上にSiC薄膜結晶を成長させる. ディボラン(B2H6)とフォスフィン(PH3)はドーピングガス。このページの動画CVD装置とSiC薄膜結晶成長説明動画で当時のCVD装置(反応管、ガスボンベ、など一式)を見せながら芝原が解説している。
京都大学松波研究室で当時使用されていたCVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)の写真. コイルで巻かれて熱で光っているのが反応管で、この中に数ミリから10mmほどのSiC結晶を入れて薄膜結晶成長実験が行われた
ステップ制御エピタキシーによって、SiC基板の上に鏡面状のSiC薄膜結晶を成長させることが可能になり((上の(a) に対して下の(b) ) 、良質のSiC MOSFETを作製できるようになった.
SiCの「アチソン法の石」(アチソンインゴット)写真. 幅十数センチ。このような石からハンマーで叩いて実験に使用する結晶を取り出した
アチソン法の石から取り出したSiCの結晶写真 /最大で10mmほどの大きさで、このような結晶を研磨したSiC基板を実験に用いた

━世界初の反転型SiC-MOSFETについての図、資料、説明━

CVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)の説明図(1986年作製のSiC MOSFETの場合)
反転型SiC-MOSFET(1986年作製)は、シリコン(Si)基板上にシリコンカーバイド(SiC)結晶薄膜を成長させて作成された.
CVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)の反応管(写真参照)の中で、シラン(SiH4)とプロパン(C3H8)を反応させ、Si基板の上にSiC薄膜膜結晶を成長させる. ディボラン(B2H6)とフォスフィン(PH3)はドーピングガス. ガスによって不純物を添加し、電気的性質をコントロールする.
京都大学松波研究室で当時使用されていたCVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)の写真. 約数センチ径のSi基板を反応管(コイルで巻かれている右側のもの、内径は12センチ前後位)の中に入れてSiC薄膜結晶成長実験が行われた. CVD装置の説明図参照
CVD装置とSiC薄膜結晶成長説明動画9
博士課程時代の芝原がCVD装置(気相エピタキシャル結晶成長装置)と各部の役割などを説明しており、当時の京都大学松波研究室にあった実験装置を見ることができる
 反転型SiC-MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)の断面模式図. (ページ上部のカラー断面模式図の元となる図)
Si(100)基板上に成長させた3C-SiCを用い、Bドーピングによる低濃度p型SiC層、Pイオン注入による低抵抗n型ソース・ドレイン領域、熱酸化によるSiO₂/SiC界面など、当時の複数のプロセス技術を組み合わせてMOSFETが作製された
反転型SiC-MOSFETのドレイン電流–電圧特性。
ゲート電圧の増加に伴ってドレイン電流が増加する明瞭なMOSFET動作を示している。この1986年の報告で、100 cm²/V·sを超えるチャネル移動度も得られていた。

━オフ角基板によるAPD抑制についての図、資料、説明ー

オフ角基板によるAPD抑制
球面研磨を施したSi(100)基板上に3C-SiC薄膜結晶を成長させた試料の写真と図.
この球面研磨基板上への成長の結果より、(100)基板を<011>方向に2度傾けた基板を使うことにより, APD(Anti-Phase-Domain)のない3C-SiC膜が得られるようになった.
この研究でオフ角基板の有用性が認識され、次のデバイス(反転型SiC-MOSFET)作製・動作実証,SiCステップ制御エピタキシー実現へつながった.
SiC半導体研究業績紹介
〖上の説明:球面研磨基板上にSiC結晶を成長させたところ、結晶の軸の向きによって表面が荒れている部分と鏡面状の部分ができた. 結晶の軸の向きが(100)面で<011>方向に2度傾いているSi基板を用いるとその上に鏡面状のSiC薄膜結晶が成長するとわかった. の意〗

球面研磨を施したSi(100)基板上に3C-SiC薄膜結晶を成長させた試料の写真と図.(オフ角基板によるAPD抑制)

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注釈

  1. 半導体産業技術研究所(RICE):2011年当時は広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所、1995年~2008年はナノデバイス研究所. 芝原は同時に広島大学大学院先端物質科学研究所の所属だった ↩︎
  2. ステップ制御エピタキシー(Step-Controlled Epitaxy):ステップ制御エピタキシャル成長法、ステップ制御VPE成長(Step-Controlled VPE Growth)のこと。SiCの結晶表面に形成された原子ステップを利用して結晶成長を制御し、高品質なSiCエピタキシャル薄膜・単結晶を成長させる方法 ↩︎
  3. 京都大学松波研究室で黒田尚孝と芝原健太郎らによって実現:黒田尚孝が実験を担当し、芝原健太郎は実験の指導、研究上の着想につながる知見の提供、実験結果についての議論、成長表面の確認、SSDM 1987での発表を担った。その背景には、京都大学・松波弘之研究室で芝原が先行して行っていたSiC結晶成長研究があり、この研究がStep-Controlled Epitaxyの着想につながった証言記録 ステップ制御エピタキシー ― 黒田尚孝と芝原健太郎」。 ↩︎
  4. SSDM Award : 国際学会SSDMで発表された過去(1969年の第1回から数年前まで)の論文の中から、年に1件だけ表彰されるたいへん栄誉な賞。SSDMは「International Conference on Solid State Devices and Materials」の略。 半導体や固体デバイス・材料分野における主要な国際学会 ↩︎
  5. CVD法の図解 SiC基板上にSiC薄膜を成長: 図、資料、説明を参照 ↩︎
  6. 模式図図、資料、説明を参照 ↩︎
  7. 芝原健太郎・西野茂弘・松波弘之「Si基板上へのSiCヘテロエピタキシャル成長」『日本結晶成長学会誌』13巻4号(1986)226–232. DOI: 10.19009/jjacg.13.4_226。関連する英語論文:K. Shibahara, S. Nishino, and H. Matsunami, “Antiphase-domain-free growth of cubic SiC on Si(100),” Applied Physics Letters 50 (1987) 1888–1890. DOI: 10.1063/1.97676. ↩︎
  8. ステップ制御エピタキシー実現につながった1987年のStep-Controlled VPE GrowthのExtended Abstractでは、Introductionに「Si(100)基板のオフ角がアンチフェーズドメインの除去に有効であることを見いだした」と記され、芝原らの先行研究が参考文献として引用されている。これらのオフ基板・APD研究が、SiCにおけるステップ制御エピタキシー実現の研究的背景となった。[→ SiC研究史]
    ↩︎
  9. 動画「テクノピア新しい半導体材料」:1986年前後の時期に三田工業が製作していた動画シリーズ。三田工業は1998年に事実上倒産し、現在は京セラドキュメントソリューソンズとなっている。著作権は当時作製した三田工業に著作権があったが、京セラドキュメントソリューションズでは動画の存在も著作権所有も確認できないとのことであった。㈱京セラでも同様の状態であったため、京セラ広報部と相談の上、一部を掲載することとした。 ↩︎

※名前の漢字は「柴原」ではなく「芝原」が正しい表記です。

※「柴原健太郎」と木偏の「柴」で検索される方も多いのですが、正しい漢字は「芝原健太郎(しばはら・けんたろう」です。「タウアニン 半導体」や「タウア・ニン 最新vlsiの基礎 第3版」、「松波 弘之」先生の名前での訪問も多くあります。「タウア・ニン 最新vlsiの基礎」は芝原健太郎が監訳し、広く使って頂いています。 [”タウア・ニン”監訳エピソードはこちら] 

編集履歴2026.1. 動画2本掲載。1/18動画「基板への成長]更新(差し替え。1/20見出し作製、動画更新(差し替え)6月 重い動画リンク削除、トピックス追加、8月脚注追加、1)と2)との順番変更、9月編集・リンク追加、

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