芝原健太郎と松波弘之:ステップ制御エピタキシーとSSDM賞/ Kentaro Shibahara and Hiroyuki Matsunami: Step-Controlled Epitaxy and the SSDM Award

1987年、芝原健太郎と黒田尚孝は京都大学・松波弘之研究室で、「ステップ制御エピタキシー(Step-Controlled Epitaxy)」を実現しました。
黒田が実験を担当し、芝原は黒田を指導するとともに研究成果をまとめ、SSDMで発表しました。この成果により、芝原健太郎、黒田尚孝、W. Yoo、西野茂弘、松波弘之の5名は、2005年にSSDM Awardを受賞しました。

この背景には、芝原らが1986年から進めていたSi基板上3C-SiCの結晶成長研究があります。Si(100)上に成長した3C-SiCでは、APD(Anti-Phase Domain)が表面形態に影響することを明らかにしました。1さらに、Si(100)基板にオフ角を設けることでAPDを除去できることを見いだしました(1986年の研究、1987年発表)。2このオフ基板と表面ステップに関する知見は、6H-SiC基板上のホモエピタキシャル成長へと展開され、1987年には6H-SiC(0001)オフ基板を用いることで、従来より大幅に低い1400~1500℃で6H-SiCを再現性よく成長させることに成功し、ステップ制御エピタキシーが実現されました。3

In 1987, Kentaro Shibahara and Naotaka Kuroda realized “Step-Controlled Epitaxy” at Kyoto University’s Matsunami Laboratory..
Kuroda conducted the experiments, while Shibahara supervised Kuroda, brought the research results together, and presented the work at SSDM. For this achievement, Kentaro Shibahara, Naotaka Kuroda, W. Yoo, S. Nishino, and Hiroyuki Matsunami received the SSDM Award in 2005.

1987年のSSDM発表

N. Kuroda, K. Shibahara, W. Yoo, S. Nishino, and H. Matsunami,“Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures,” Abstract of 19th Conf. Solid State Devices and Materials (SSDM), pp. 687-690 (1987). DOI: 10.7567/SSDM.1987.C-4-2

松波弘之・京都大学名誉教授は、2005年SSDM Awardの共同受賞者の一人です。2023年には、SiC半導体分野における長年の功績によりIEEE Edison Medalを受賞されています。

ステップ制御エピタキシー実現まで:黒田尚孝氏による記録
ステップ制御エピタキシーの実現に至る経緯について、黒田尚孝氏が自身の記憶をもとに、当時の出来事を時系列で綴っています。

Hiroyuki Matsunami, Professor Emeritus of Kyoto University, was one of the co-recipients of the 2005 SSDM Award. In 2023, he received the IEEE Edison Medal for his longstanding contributions to the field of SiC semiconductors.

SSDM賞表彰式での芝原
SSDM賞 賞状
受賞者:右から黒田尚孝,芝原健太郎, WooSikYoo,西野茂弘,松波弘之(敬称略)

松波弘之 京都大学名誉教授(IEEEエジソン賞受賞)(SSDM賞共同受賞者)  

2005年4月にとても嬉しい連絡を受けた。

京都大学が1987年にSSDM(固体素子材料国際会議 )で発表した「 Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures」by N. Kuroda, K. Shibahara, W. Yoo, S. Nishino, and H. Matsunami がSSDM-2005で表彰されるというニュースであった。
第1回から2000年までの間にSSDMで発表された論文の中から、年に1件だけ表彰されるたいへん名誉な賞である
授与式では、著者の5人(黒田、芝原、兪、西野、松波)が集まることができ、たいへん嬉しく、晴れがましい経験をした。
 この技術が中核となって、今、パワー半導体 SiC の実用化が始まっている。 (「故 芝原健太郎氏 追悼文集」(2011年)の中から)

西野茂弘 京都工芸繊維大学元教授(SSDM賞共同受賞者)

SSDMアワード授賞式 2005.9.13 

Solid State Device and Materials(固体素子・材料コンファレンス)は、固体エレクトロニクスの進化・発展によって、人類の生活の質的向上に資することを目的に開催される、日本における伝統ある国際会議の一つ。今年で50周年を迎えた。
 前身である固体素子コンファレンスは、国内会議として1969 年に発足した。以後毎年開催されていたが、初めて国際コンファレンスとして開催されたのは1976 年、その後1982 年までは3年に1回、1984年から1990年までは隔年、そして1990 年以降は毎年、国際コンファレンスとして開催されるようになった。1983 年にはそのカテゴリーに材料分野を取り込んで、現在の固体素子・材料コンファレンス(SSDM)に名称を変更した。
 同コンファレンスは、固体素子とその材料に関わる研究者に最新の成果を公表する機会を提供するとともに、その問題点や解決法を議論することで進むべき方向を提示することを目的として
おり、新素子のための新しい物理現象の発見・解明、さらに素子として実現するためのデバイス・プロセス技術、材料物性の評価技術の提案などが毎年発表されている。
発表: 1987年のSSDMで発表
題目:Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures

著者: N. Kuroda,  K. Shibahara
, W. S. Yoo, S. Nishino, and H. Matsunami
   Kyoto Univ., Japan

 このアワードは過去に発表した論文から優秀なものを年に1件を表彰するもので、私たちの発表がアワードを受けたのはたいへん名誉なことです。

受賞者:右から黒田尚孝, 芝原健太郎, Yoo Woo Sik, 西野茂弘, 松波弘之(敬称略)
右からSSDMの委員長、芝原健太郎、黒田尚孝

現在実用化されているSiCパワーデバイスは、すべて ステップ制御エピタキシーを用いて作られています。
SiCパワー半導体の市場規模は既に3千数百億円、2029年までに100億米ドルを超えるという予測まであります。(フランスの調査会社Yole Groupによる予測 )

  1. Si(100)上に成長した3C-SiCでは、APD(Anti-Phase Domain)が表面形態に影響することを明らかにしました。:K. Shibahara, S. Nishino, and H. Matsunami, “Surface morphology of cubic SiC(100) grown on Si(100) by chemical vapor deposition,” J. Crystal Growth 78 (1986) 538–544. DOI: 10.1016/0022-0248(86)90158-2. ↩︎
  2. Si(100)基板にオフ角を設けることでAPDを除去できることを見いだしました(1986年の研究、1987年発表)。:K. Shibahara, S. Nishino, and H. Matsunami, “Antiphase-domain-free growth of cubic SiC on Si(100),” Appl. Phys. Lett. 50 (1987) 1888–1890. DOI: 10.1063/1.97676.
    ※研究は1986年に行われ、論文は1987年に発表。 ↩︎
  3. このオフ基板と表面ステップに関する知見は、6H-SiC基板上のホモエピタキシャル成長へと展開され、1987年には6H-SiC(0001)オフ基板を用いることで、従来より大幅に低い1400~1500℃で6H-SiCを再現性よく成長させることに成功しました。 ↩︎

編集履歴2025年写真追加、キャプション、2026年4月:タイトル変更、英語併記、記事ボタン設置

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする