『タウア・ニン最新VLSIの基礎』監訳の背景・エピソードと各界からの評価Background, Editorial Insights, and Reception of the Japanese Translation of Fundamentals of Modern VLSI Devices

本書の監訳は、芝原健太郎と原著者Taur氏との対話から始まりました。その経緯や第2版刊行までの歩み、そして各界からの反響をご紹介します。
This Japanese edition grew out of a series of discussions between the author, Mr. Taur, and Kentaro Shibahara. Here we share the background, the path to the second edition, and its reception.

原著者タウア氏との対話から始まった監訳
Origin: Dialogue with the Author, Yuan Taur

この本は教育機関・産業界の双方から非常に高く評価されており,先端 CMOS デバイス分野標準の教科書と位置づけられています。
芝原は、この本の日本語化についてVLSI Tech. Symp.2000で原著者のTaur氏と話し合いました。原著は既に日本でも良く知られていました。これを日本語化することで、大学や企業などで多くの人の役に立つに違いないとTaur氏と意見が一致しました。

数多く売れる本ではないので、少々心配しながら丸善出版さんに相談しましたが杞憂でした。丸善出版の担当者様のもと、翻訳・監訳作業が始まりました。休日は付箋付きの原稿を積み上げて取り組みました。
竹内潔先生、寺内衛先生、寺田和夫先生、堀敦先生、宮本恭幸先生が翻訳を分担して下さいました。この本を購入しやすいように印税はごくわずかに抑え、それを全員で等分しました。ですから、この先生方も、日本語版があれば多くの人の役に立つという思いで貴重な時間を割いて翻訳なさったに違いありません。

志を継ぎ刊行された第2版
Second Edition Published in Continuation of His Vision

その後、原書の第2版が出て、第2版の翻訳・監訳作業が始まりました。翻訳は宮本恭幸先生と内田健先生との3人でした。
場所を選ばす出来る仕事として、最後の入院生活でも監訳を続けていました。が、2011年4月には出版まで続けられそうにないと思い、後を宮本先生と内田先生にお願いしました。そして両先生のお陰で無事に「タウア・ニン最新VLSIの基礎 第2版」が2013年1月に出版されました。

各界から寄せられた評価
Reception from Academia and Industry

松波 弘之(京都大学名誉教授
Hiroyuki Matsunami, Professor Emeritus, Kyoto University追悼文集よりFrom the Memorial Collection
2002年秋に、丸善から、『タウア・ニン 最新VLSIの基礎』(Yuan Taur and Tak H. Ning 著)芝原 健太郎 監訳 A5判・並製・610ページを出版した。5人が翻訳にかかわり、その監修であるから途轍もなくたいへんな作業であったことと想像する。
ディープサブミクロン VLSI デバイスにとって、特に重要なパラメータや性能要因に重点をおきながら、最新の CMOS (Complementary MOS)やバイポーラの基礎を解説しており、米国の有名大学の大学院1年次の教科書として使われているとのことであった。
2002年9月頃の mail から、彼の発したメッセージを記す。
>松波先生 広島大 芝原です。構想から 2 年以上の時間がかかったのですが、下記訳書を出版することができました。研究成果よりはもう少し何かしら世の中に広く役立ち、形に残る仕事がしたいと思い始めたものです。

西田 征男(広島大学大学院 博士課程修了)
Y. Nishida, Ph.D., Hiroshima University Graduate School
私は現在、企業で半導体素子開発に携わっておりますが、先生が翻訳された  「タウア・ニン最新VLSIの基礎」は半導体素子の理論を学ぼうとする者に広く普及しており、非常に大きな業績だと思います。
先生は「研究成果よりはもう少し何かしら世の中に広く役立ち、形に残る仕事がしたい」とおっしゃっていたとありますが、日本の半導体産業の人材育成に多大な貢献をされたのは確かなので、先生の望まれた通りの成果が得られていると思います。

加藤 正史(名古屋工業大学 教授)
M. Kato, Professor, Nagoya Institute of Technology
芝原先生が翻訳されたタウア・ニンの第二版も、持っていて今日も見ていました。直接のご面識はないのですが、芝原先生の業績は後世にも継がれていることを、お伝えください。

企業在籍の研究者・技術者
Researcher and Engineer in the semiconductor industry
私達の世代ではSzeの教科書でデバイス物理を学びましたが、同じような内容をより現代的な視点で学ぶことができる本だと思います。最近では大学院の講義用テキストとして選ばれることも多く、後輩の東北大学出身の後輩もこれを使ったと言っていました。今からデバイスの勉強をするならSzeよりタウア・ニンだと思います。
訳を分担した東工大の宮本恭幸先生は、化合物半導体の先生で、もう20年以上もお付き合いしてきました。この本も技術の進歩に合わせてアップデートされ、第3版ではFinFETなどの先端半導体についての内容も記載されているようです。
世界中で読まれているこんなにいい本を日本の半導体技術者が日本語で読めるようにしていただけたのは、大変有り難いことだと思います。

現在出版されている第3版には監訳者芝原健太郎の名前はありません。が、芝原の翻訳文が第3版の中のあちこちに残っているはずだという見解から、丸善出版社内では芝原健太郎を著作権を有する者のひとりとして残して頂いています。

編集記録:2026年4月15日タイトル・見出し変更、英語併記

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